世界のみえかたがかわる。
作家のことが何一つわからないプロフィール文でおなじみの野﨑まどですが、
書いてるお話も分かるんだけど全くわからない(私には)のでおなじみなので紹介したいと思います。
野﨑まど作品で私が最初に読んだのは「Know」でした。
確か、「本の雑誌」で紹介されていたので読んでみようと思ったんです。
絶賛されてたし。
うわぁ、おもしろい
調べてみたら、読んだのは2013年の年末、約9年前です。
にもかかわらず、「おもしろかった」という感想は覚えています。
主人公の名前さえ忘れているのに、「感想」というか「感覚」は覚えている。
目の前が真っ白になる感覚。
もちろん、私が読んでいた本の、ページ構成による影響が大きいのは百も承知だけれど、それでも。
みえる世界が変わる読書体験だったことを、少しだけお話させてください。
知るということ
簡単に「know」のあらすじを
近未来の日本。人々は脳に電子葉とよばれる情報処理装置を埋め込み、
街のいたるところには情報通信用素材が張り巡らされている社会。
なので、知りたいと思った時には脳に情報が送り込まれる。
「知っている」ということが違う意味になった世界。
個人が知ることのできる情報にはクラスごとに制限があり、通常は1~3。
主人公の連レルは情報審議官なこともあり、クラス5の権限を持っていた。
ある日、恩師が残した暗号を発見した連レルは、”啓示”に導かれ一人の少女と出会う。
世界観もうちょい説明します
めっちゃ簡単にいうと、スマホが頭に埋め込まれてるみたいな感じで、
「知りたい」と思った瞬間にはその事柄を知ることができる世界です。
なので、「知らない」ことも、「覚えている」という概念も意味をなくした世界
そして、完全な情報化社会ということは情報格差社会でもあり、
クラス0の人は、あらゆる情報にアクセスできないし、個人情報は守られることもない、「裸」の状態。
クラス0の人の個人情報は、住所などは言うに及ばず、賞罰、メールなどのやり取りも筒抜けです。
逆に内閣総理大臣などの役職にはクラス6の権限が与えられており、ほぼすべての情報を知ることができ、個人情報は守られる。
めちゃくちゃ怖い世界です。
で、連レルはクラス5なので結構いいほうなんですが、出会った少女、「知ル」のクラスは”9”。
しかも便宜上そう呼んでいるだけで、桁が違う。知ルが埋め込んでいるのは、”量子葉”
つまり
”世界の全ての情報に手が届く人間”
その意味するところは、国家機密レベルの情報が読み出せる、だけじゃなく、人の心、思考までもわかる。
しかも相手が思った、考えた、その瞬間に。
知らないことなんてないじゃん。全部知れるんだから。
それでも、知ルが知りたかったこと。知らないこと。
ネタバレありの感想
「知る」の概念が変わった世界で、本当に「知る」こと。
ああそうだよね、これはやってみないとわからないよね、ということを知ルはします。
そして、世界を変える。変えてしまう。
その先へ行ってしまう。
誤解を恐れずに言うと、ちょっといいなあと思ってしまいました。
その先を知れるのなら、行ってみたいなあと。
しかも行ったきりじゃなくちゃんと戻ってきます。
だから、世界が変わってしまう。
私が読んだハヤカワ文庫版では、ページをめくったあとにその一文があるので余計に目の前が真っ白になる感覚があります。
今まで物語の中で構築されてきた”世界”が一瞬で崩れ去ります。笑っちゃうくらいきれいさっぱり。
最後で”全て”を覆してくるのが野﨑まど作品の特徴な感じがします。
もし、これから読んでみようという方がいらっしゃったら、ページ構成に気を使ったメディアで読むことをお勧めします。
では、また。
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