【好きな作家について語る】綾辻行人編 その4

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どうも、片田舎のヴィレヴァンで本棚いじってるスタッフです。
ここ十五年くらいずっと、「ひとが死なない話を読もう運動」を自分のなかで展開してますが、展開してるだけで実動が伴っていないという噂。

推し作家、綾辻行人について語ってきた記事も四回目。
もしご覧になってなくて、気になる! って方は、それぞれこちらからどうぞ。いやまあ、記事一覧から飛べんだけどね。

一回目 推し作家、綾辻行人について
二回目 『十角館の殺人』について
三回目 館シリーズについて

今回は、こちらもある意味代表作といえる『Another』シリーズをご紹介しようと思うのですがその前に。

皆さん、こちらのニュース、ご覧になりました?
https://news.yahoo.co.jp/articles/3e893c5c65bfa8bcb416fa6e62e91d734a2f0f76

株式会社728による新しいファッションブランド『PUZZLE(パズル)』。
推理小説を読むのではなく、身に着けるというプロジェクトだそうです。
そして第一弾のデザインは、『十角館の殺人』モチーフ。ね、買うっきゃないね。
クラウドファンディングサイト『GREEN FUNDING』で先行販売がスタートしております。
リンク置いときますので、気になる方は飛んでみてくださいな。
https://greenfunding.jp/lab/projects/6614

どのデザインもいいんですけど、三つ目のカップモチーフ。
これ、じっくり眺めて確認したあと、にやっとしちゃうやつ。

早川書房はSF文庫のかっこいい黒表紙のやつとかをTシャツやトートバッグにしてますけど、講談社もやればいいのに、ってずっと思ってたんですよね。
このプロジェクトは個人で発足させてらっしゃいますが、ライセンスなどもクリアしているそうですので、全力でお金を落とせます。

これが成功して、他の作家、作品モチーフのTシャツがたくさん出てくれれば、嬉しいかぎり。
(個人的にはもうちょっと安くなってくれるともっと嬉しい。)

閑話休題。
『Another』シリーズの紹介へと戻りましょう。

一応ネタバレはしないよう気を付けてはいきますが、なんかさ、正直どの話を紹介しようとしても、「いいからとりあえず読んで」で終わっちゃうんだよな……。

『Another』シリーズは角川書店より発行された綾辻行人のホラー作品。
同一舞台、設定での物語で現在三作ほど発表されております。

『Another』2009年10月
『Another エピソードS』2013年7月
『Another 2001』2020年9月

『Another 2001』のみまだ文庫になっていませんが、他二作は角川文庫で手に入れることができます。
一作ずつ紹介していきましょう。

目次

『Another』

綾辻ホラーの傑作。
「『Another』なら死んでた」という用語を聞いたことある方、いらっしゃいますかね。
そのアニメ『Another』の原作がこちらになります。
最近のことだと思ってたけど、『Anoter』のアニメ、2012年だから十年以上前のことでした。まじか。
コミカライズも十角館と同じ、清原紘によってなされております。全四巻。
(申し訳ない、私、アニメ未視聴、コミック未読です。)
コミカライズされたりアニメになったりと、綾辻作品のなかではわりと珍しいタイプ。

ホラーといっても、主人公が殺人鬼に追いかけられるとか、そういう系統ではなく、じわじわ迫る〈呪い〉のほう。

夜見山北中学三年三組は呪われている。
非科学的、非現実的な〈呪い〉。
「それ」が始まると、三年三組の関係者が「死」に近づく。
災厄に巻き込まれる三年三組の生徒たち、対抗する手段、抵抗空しく犠牲になっていく人々。

主人公は三年三組に転校してきた男の子。
彼と、眼帯をしたミステリアスな少女、見崎鳴を中心に物語は進んでいきます。
見崎鳴がビジュアル含めてキャッチ―なキャラクタなので、コミカライズやアニメ化には適していたのだろうな、とは思います。
主人公の一人称小説なのですが、そこそこ頭の回転の速い子なので読んでいてストレスを感じなかったあたりもポイント高い。

個人的に『Another』で一番好きな点はなんといっても、〈呪い〉が生まれた経緯。
『善意』なんですよね。
善意と言い切るとちょっと語弊があるんですが、それでも決して、誰かを恨んだり妬んだりした末のことではなかった。
けれどそのある意味狂気的な行動が、長く残る〈呪い〉を生み出してしまった。
もうね、この設定だけでぞくぞくしすぎて吐き気がする(誉め言葉)。

さらに、その〈呪い〉が「ある年」と「ない年」とがあるんですが、「ある年」であるための合図。その現象がまたぞっとする。

〈呪い〉の犠牲になってそこそこのひとが死ぬシーンがあるんですが、それがまた凄惨なんですよね。
傘がのどに刺さったり、エレベータの天井が落ちてきたり、首掻き切ったり。いやー、ぞっとする死に方ばっかり。よくこんな死に方が書けるな、と読むたびに思います。

ほかにもぞっとした点はいくつかあるんですが、主人公が自分の母親についての気づきを得たところとかもね、鳥肌立ちました。
今年が「ある年」であったことを再認識するシーン、そして物語のラストの世界が反転する事実が判明するシーン。鳥肌立ってない瞬間がないんじゃないのか、この作品。

ここぞという部分の言い回し、傍点の振り方、ダッシュの使い方、すべてが素晴らしく、効果的。
単行本が発行された当時、買って帰ってそのままぶっ通しで読み切りましたもの。

そしてアヤツジストとして無視できない箇所。
物語最後のあたりに出てくる〈崎谷記念館〉
名前見た瞬間、「あっ(察し)」ってなりましたね。あかん、それはあかん。

ミステリ的なトリックはないのですが、書いているのは綾辻行人ですので、綾辻色満載の物語的トリックはがっつりと。
ただ、その謎解きをするにあたり、ミステリのように「論理的視点」からは行われていない(根拠が非科学的だったり)ので、やっぱりジャンルに割り振るとしたら「ホラー」になるでしょう。

いずれにしろ、本作が綾辻ホラーの傑作であることに間違いありません。


『Another エピソードS』

夏にこそ読むべき綾辻ホラー。
こちらの作品のメインキャラは、前作にも登場した見崎鳴。
眼帯のミステリアス美少女です。
見崎鳴と、とある幽霊が、死体探しに翻弄する話。

「箪笥も箱の中もしらべたけど、どこにも僕の死体はなかったよ」

『Another エピソードS』綾辻行人


こんな話です。

この幽霊が誰であるのか、という点が謎の一つなわけですが、読者がそちらに意識を向けないような書き方がしてあって、やっぱりすごいなぁ、と。

幽霊の正体が判明したあとも、追い打ちをかけるようにいくつも『オチ』が待っているので、ラストまで気が抜けない。
途中で気づきはしたんですが、幽霊である僕が恋をした少女についての部分が、この話のなかでは一番好きです。「あぁぁ」って頭抱えたくなった。

ちなみにこの話、『Another』本編の夏休み中の話なんですが、あの体験をしてる最中にこっちの経験もしてるとか、見崎鳴、半端ない。
よくこれで夜見山に帰ろうと思ったね。

『Another 2001』

『Another』から三年後の夜見山北中学校が舞台。
主人公は『Another エピソードS』に出てきた少年。エピソードSのあとがきで続編についてちらっと書いてあったので、まあそうなるだろうな、と。
『Another』シリーズはがっつり頭から繋がってるので、きちんと順番に読むべきですし、こちらの話はとくに前作、前々作をしっかり把握したうえで読んだほうが何倍も楽しめると思います。
読んだのが昔だから前作、前々作がうろ覚えかも、って方、悪いことは言わない、読み返してから手を出しなさい。

個人的な感想を一言にしたら、「容赦なし」
これに尽きる。

エピソードSとは違って、こちらはばっちり一作目と同じ〈呪い〉についての話になります。
だからね、知ってるわけですよ、読者は。
〈呪い〉の詳細について、その打ち破り方について。
さらにご丁寧にも、一覧表が冒頭にあるものですから、読者には分かる仕様になってるわけです。
ネタバレはしたくないので、具体的に何が、とは言いませんけれども、分かるんですよ。

基本的に、いろいろな点でいろいろな部分が読者に気づかれることを想定されている物語かな、と思います。
もともと一作目と同じ災厄をなぞっているわけですから、同じ「驚き」は使えない。となれば、そこを読者に気づかれたうえで、違う「驚き」を持ってこざるを得ないんですよね。
誤解を恐れずに言えば、やっぱり一作目の衝撃はどうあっても超えられず、一番面白いのは一作目だと思いますが、この話はこの話で、ああなるほどなぁ、というじんわりとした面白さがありました。

そして、いったい何が「容赦なし」なのかといえば、死に方が。殺し方が。
えげつない。
ほんと、こういう系統の小説だと仏心は無用なのだな、と痛感しました。
未読の方の衝撃を奪いたくないので具体的には書きませんが、○ンク○で○○されるのと、○○収○車の○ーラ○に○○こまれるというコンボにだいぶやられた。
何がなんだか分からないでしょうけど、まじでこれだけは、いまだに忘れられない。

これから読まれる方は、前二作を読んだうえで、いろいろと覚悟をもって挑んでくださいまし。


どの作品も「オチ」に驚いてもらいたいので、そこがばれないように記事を書くのってほんと難しい。
『Another』シリーズが、めちゃくちゃぞっとするホラー小説だってことが、ちょっとでも伝わっていればいいのですが。
とりあえず、私がこのシリーズをめちゃくちゃ好きだってことはたぶん伝わってると思います。
おひとりでも多く作品に興味を持っていただけたら嬉しいです。



さて、今回はこのあたりで終わりにしておきましょう。
次回は囁きシリーズについて書きたいと思います。
このシリーズもね、めちゃくちゃ面白いんでね。紹介しとかないとね。

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この記事を書いた人

本読み。
新本格好きのSF初心者。

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