骨格は王道、味付けは独特。『本好きの下剋上』について語りたい。~前編

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こんにちは。ティーンの頃に今でいう『ラノベ』が刊行されはじめてどっぷりハマったけど、その頃はまだラノベという単語が存在しなかった世代のサブカルおじさん、いとうさです。

今回は、今や1大ジャンルとなり毎シーズンアニメ化作品を生み出している『小説家になろう』出身作品、通称『なろう系』の中でも、骨格は王道でありながら味付けがひと際独特な
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』(以下『本好きの下剋上』と表記します)について語りたいと思います。

目次

なろう系のこと

このジャンルの小説やアニメにあまり興味のない方でも、『なろう系』『小説家になろう』という単語は、かなりの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか?

『俺TUEEE』『チート』『異世界転生』『ハーレム』『追放もの』あたりの単語まででると、あああのへんか!とイメージが浮かぶと思います。

そういう有名テンプレを組み合わせた『いかにも』な作品が多いのも事実ですが、例えば有名どころの異世界転生もの『無職転生』『転スラ』『REゼロ』『このすば』『幼女戦記』『オーバーロード』あたりを比べてみても、
世界観や作風や仕掛け、見所など、かなりバリエーション豊かだったりします。
バリエーション豊かなヒット作と、そこから派生したブームで生まれるジャンル作品が群雄割拠する、『なろう系』の『異世界転生ジャンル』の中でも、個人的にひと際ユニークさが輝いていると思う作品が、香月美夜先生により2013年9月~2017年3月まで『小説家になろう』に投稿され、書籍化、漫画化、アニメ化等々様々なメディアで展開されている『本好きの下剋上』です。

『本好きの下剋上』とは。

『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』まずタイトルからしてちょっと変わっています。

幼いころから本が好きで、司書資格を取り大学図書館への就職が決まっていたのに、大学卒業直後に『本に埋もれて』死んでしまった本須麗乃は、識字率が低く、本が少ない(貴重品な)世界に転生してしまいます。
貧乏な兵士の娘、マインとなった麗乃は、本のない生活に絶望しそうになるも、本がないなら作ってしまえばいいじゃない!と、本が流通していない異世界で、本に囲まれた生活を目指して奮闘することとなります。
下剋上、とある通り成り上がりものでもあり、副題の通り、司書になるためにはまさに手段を選びません(笑)

ストーリーは幼少期にはじまり、主人公の成長に合わせて舞台を変え、大きく広がってゆくのですが、マインの最優先事項は常に本。

どのくらい最優先事項化といいますと、
例えば異世界転生モノらしく主人公チートな面もあって、マインは実は強大な魔力持ちです。
お約束の制御できない魔力暴走シーンなんかもあるのですが、この魔力暴走の主なトリガーが『本への欲求を邪魔されること』だったりします。
DBの悟空やH×Hのゴンさんが戦闘狂であるかのごとく、本フリーク。こんな主人公、なかなかいないと思います。

また、マインの成長に合わせて、この世界での本の在り方もまた進歩していくのですが、
本がらみの話に入る前にまず、『本好きの下剋上』において、なろう系や異世界転生モノでのお約束、異世界転生主人公チートが独特の使われ方をしているポイントをご紹介したいと思います。

※現在アニメ化している範囲で、できるだけ核心になるネタバレは避けて書いておりますが、若干先の内容に触れるところ等あります。

『本好きの下剋上』における異世界転生チート

まずはアニメ版1期のPVを

全体のトーン(OPとEDも含めて)が、なつかしの『世界名作劇場 』を思わせる雰囲気で、個人的にアニメ版GJ!とおもっているのですが、およそ異世界チート、という雰囲気ではないですね。

初期のマインが発揮する、異世界人ならではの文明チートも小規模で、植物油から『リンシャン』を作ったり料理をひと工夫したりと生活改善に始まり、『レース編み』の技術で姉の晴れの日の髪飾りを作ったりと
日常生活に根差した『異世界スローライフ系』を思わせるものなのですが、これが後々大きく発展して商業ルートになって行きます。そこで得た資金と人脈が本づくりにつながるのです。
『転スラ』の街作り~国造りのような技術革新を魔法抜きでやっていくような感じで、この『チートすぎないけど確実にその時代のレベルを超えた技術革新』のバランスが絶妙で小気味良いのも、この作品の魅力の一つです。

この技術革新、マインは無意識にやってしまったり価値を軽く見積もりすぎたりで、度々周囲を困惑させます。
これが、いわゆる『俺、またなにかやっちゃいましたか?』しぐさそのものでして、こういうとこ、王道だなあと思うのです。

また、マインの能力や気質に惹かれて、成長するにつれ様々なハイスペイケメンが集ってきます。
モノづくりが得意でマインのよき理解者幼馴染のルッツ

引用元:TVアニメ本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 公式HP/登場人物
http://booklove-anime.jp/character/

父の同僚で愛妻家のコミュ強オットーさん

引用元:TVアニメ本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 公式HP/登場人物
http://booklove-anime.jp/character/

口は悪いが陰に日向にマインの庇護に尽力してくれる子安ベンノさん

引用元:TVアニメ本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 公式HP/登場人物
http://booklove-anime.jp/character/

一見冷徹完璧マンだが複雑な内面を持ちマインの人生に深く踏み入っていくことになる神官長フェルディナンド

引用元:TVアニメ本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 公式HP/登場人物
http://booklove-anime.jp/character/

などなど。
これまたシチュエーションだけ見れば『おもしれー女』系な王道っぽい雰囲気なのですが、その『おもしれー』の部分がことごとく、マインの『本づくりにかける知識と情熱』に収束するブレなさ。良すぎです!!!

主人公チートの魔力持ち異世界転生チートの現代知識おもしれー女属性モテ要素、加えてマインの人間的な成長譚、と王道の物語要素を備えながらも、それらの向かう先はことごとく主人公の『本を作りたい、本を読みたい、本に囲まれて暮らしたい』というファナティックなまでの本への欲求

『王道かつ独特』と表現したくなる気持ち、伝わりましたでしょうか?

今回は、このあたりで!
次回、後編では物語のメインテーマである『本づくり』に踏み込んで語りたいと思います。

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この記事を書いた人

ヴィレヴァン歴ン十年。全国異動中のサブカルおじさん。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 時代考証と言ったら変だけど、異世界が存在してたとしてその世界はこんな風な設定の世界だとして、その世界で暮らす人々はどのような社会システムで、どの程度の文化レベルで、言語はこうで、宗教はこうで…。
    みたいな異世界への説得力の積み上げが凄いと思う。
    魔力のある世界で、しかも幼い頃は魔力が制御出来ず身体に毒になるとして、貴族がそれを抑える術を独占していれば確かにあれだけ階級が固定されて技術レベルの発展が止まった世界が出来上がるよなぁと納得しかない。
    なろう系ってものによったら中性っぽい世界観なのにウイルスとかの単語が平然と使われてたりとめっちゃ冷める要素が沢山ある中、本好きはこの長さでよく没入感を阻害する齟齬を出さずに成立させたなと

  • この小説、基本的にはマインの一人称で進むのですが、プロローグ、エピローグ、SSで語られる他者視点によって、「あれって、実はそうだったのか!」という気付きがあり、物語にさらなる深みが出るのが非常に面白い。

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