『アンデッドガール・マーダーファルス』がアニメ化だって!?

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どうも、片田舎のヴィレヴァンで本棚いじってるスタッフです。
そのうち自分が買おうと思って発注をかけた本が、とりあえず売り場に出しているうちに売れてしまったとき、喜べばいいのか悲しめばいいのか、いまだに悩んでます。

アンファル、アニメ化。
Twitterで記事を見て喜んだので、紹介をば。
いつものように敬称略とさせてもらってますので、そこはご了承くださいませね。

いや、デビュー当時から青崎有吾を追いかけてる身としては嬉しいですね、このニュース。
動いてしゃべる師匠と津軽と静句さんが見られるっていうんですから。
……まあ師匠は身体がないから動けないんですけどね!

目次

『アンデッドガール・マーダーファルス』

著者、青崎有吾については他作も含めてまた改めて記事を書きたいなと思ってますので割愛。新本格を読んでミステリ作家になった、という点で感慨深い思いを抱いております。
出版レーベルは、講談社の講談社タイガ。講談社ノベルスの兄弟レーベルという位置づけですので、講談社ノベルスで育ってきた人間は自然と手を伸ばしますよね。
個人的で偏った印象を述べるなら、どちらかといえばライト寄りなレーベル。イラスト系表紙が多いからですかね。
かといってすべてがライトノベルというわけでもないラインナップですので、いろいろと楽しめる棚ではないでしょうか。

『アンデッドガール・マーダーファルス』も、その中の一作。
現在三巻まで出版されてます。
著者青崎有吾はミステリ作家ですので、本作もミステリです。
そしてファンタジィでもあります。

まずは登場人物をご紹介。メインは三人。

怪物専門の探偵、輪堂鴉夜
御年962歳の生首美少女
身体を失って首だけとなっても死ぬことができない化け物。
不死となった平安時代より、十四歳と三ヶ月の姿のまま。
当初、己を殺してもらうため、鬼と混ざった真打津軽と接触を持つが、津軽、靜句を伴って身体を取り戻す旅に出る。

〝鳥籠使い〟の弟子、真打津軽
半人半鬼の青年。
もとは化け物退治を仕事にする部隊に所属していたが、ある異人の手により鬼と混ぜられ、〝鬼殺し〟として見世物小屋で働いていた。
異人を追うため、鴉夜の弟子となり、運び手を担う。

鉄面皮の美人メイド、馳井静句
鴉夜に仕えるメイド。一族の家訓として傀儡のように鴉夜に従っている。
鴉夜には絶対従順だが、津軽にはとても冷たい。
得物は刀と銃が一体になった特殊な武器『絶景』。

静句は基本無口なので、鴉夜に話しかけられたときくらいしかしゃべってくれませんが、鴉夜と津軽のやりとりが軽快で、とても気持ちがいいです。
あと津軽が静句から「似非噺家」と称されているくらい、落語っぽいことをひとりでしゃべってたりするキャラクタなので、これもまた読んでて楽しいところ。たまに「ちょっと黙ろうかお前さん」って思うところもあったりなかったり。

ストーリィ

ストーリィは、怪物の関わる事件を〝鳥籠使い〟が解決していくというもの。
大きな目的はありつつ、手がかりを探しながら探偵として活動していく物語です。
謎解きばかりではなく、どちらかといえばメインはVS怪物(怪盗、探偵、用心棒他)のバトル。

1巻はVS吸血鬼、VS人造人間。
2巻はVS名探偵、VS怪盗、オペラ座の怪人、VS異形の怪人たち。
3巻はVSエージェント、VS人狼。

吸血鬼、フランケンシュタイン、ドラキュラ、カーミラ、ポアロ、ホームズ、ルパン、モリアーティ、カーミラ、オペラ座の怪人、人狼などなど。
怪物から名探偵まで古今東西の物語に出てきたキャラクタがたくさん登場します。
そのあたりを読んだことある方は二倍楽しめる。
読んだことのない方も、これをきっかけに、それぞれが登場する作品に手を伸ばされるのもいいかと思います。
と書きつつもね、私、恥ずかしながら、フランケンシュタインもドラキュラもカーミラも、きちんと読んだことなかったりします。読みたいリストにはずっとあるんですけどねぇ。

バトルは基本的に人外VS人外なので、派手だし、頭おかしくてとても好きですね。
頭おかしいのがいいよね、せっかくなら。

ただここで重要なのは、著者はミステリ作家ということでして、バトル多めではありながらきっちりミステリが組み込まれている、という点です。

特殊設定ミステリ

そもそも主人公一行からして人間ではなく、怪物界隈での謎解きですので、我々人間が持つ一般常識が通じません。
しかし、怪物にも論理は通用する、とは主人公鴉夜の言葉。
首だけで生きている怪物が何を言っているんだ、と思われるでしょう。
彼女曰く、「『死なない』という理屈が通じている」とのこと。
狂人には狂人の論理がある、とはミステリ界でよく見かける言葉ではありますが、それに倣えば怪物には怪物の論理がある、といったところでしょうか。

「怪物の論理」、我々が持つ一般常識とは異なる特殊な論理を読者に事前に提示したうえで、その中で謎解きをする。
そういった特殊設定ミステリにも名作は多くあります。
山口雅也『生ける屍の死』しかり、上遠野浩平『殺竜事件』しかり。最近でいえば、今村昌弘『屍人荘の殺人』あたりもそうですよね。
このあたりもめちゃくちゃ面白い作品なので、機会作って個別に記事書きたいところ。

アンファルもそういった特殊設定ミステリにあたる作品です。
ファンタジィでありながら、ミステリとしての論理性は損なわれていない。
青崎有吾はどちらかといえば、かなり緻密な論理を展開する作家なのですが、アンファル一巻一章でも疑問点をつぶしていく感じが青崎らしさがよく出ていたと思います。

そして個人的にこの作品の何が素晴らしい点かといえば、あくまでもミステリ要素を排除しない、という部分。排除できない、という部分。
ファンタジィとミステリ、バトルとミステリを融合させた作品はいくつか知ってますが、シリーズ化してくると、どんどんミステリ要素が薄れていくという印象があります。
正直、アンファルの一巻を読んだときもその点を一番心配しました。
せっかく良質の特殊設定ミステリなのだから、そこは薄れさせないでほしい、と。

ただ気づいたんですけどね、作中で鴉夜自身が何度も言っていたとおり、首しかない彼女は頭を使うことしかできないわけです。
津軽や静句のように怪物とのバトルで見せ場を作ることができない。
つまり、鴉夜を主人公として置き、その活躍を文章にしようとするならば、ミステリ要素は決して排除できないわけですよ。

頭良いな、と素直に思いましたね。
青崎有吾、いい設定持ってくるじゃん、と。まあこれ、著者に対する縛りになってるなとも思ってますが。
ということで、『アンデッドガール・マーダーファルス』は、作中でどれだけ怪物と戦っていようと、謎解きがまったく組み込まれないということはあり得ない、ミステリ読みとして安心して読むことのできるバトルものなのでございます。

アニメ化

公式サイト https://undeadgirl.jp/
公式ツイッター https://twitter.com/undeadgirl_PR

そして先日発表された、アンファルアニメ化のニュース。
原作小説の表紙、大暮維人のイラストでのイメージがあったんで、津軽が思ってたより筋肉むきむきで笑っちゃいましたが。

津軽や静句のバトルや鴉夜の謎解きパートももちろん楽しみなんですが、一番気になっているのは津軽の軽口。
一人称が「あたくし」の似非噺家の語りを、実際に音として聞ける日を楽しみにしてます!

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この記事を書いた人

本読み。
新本格好きのSF初心者。

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