古い雑居ビルの地下1階にその店はありました。
石川県金沢市片町にあった、ヴィレッジヴァンガード金沢ラブロ店。
私がはじめて足を踏み入れたのは、小学校4年生のとき。
入り口にはレオンの馬鹿でかいポスター、薄暗い迷路のような店内。
大量の交尾するぜんまい仕掛けの動物達。宇宙の本や、自殺の本。
なッッッ!なんなんだこの店はッッッ!!!!!
それまで私が行ったことのあるお店とはまったく違う、
入っちゃだめだったんじゃないかと、ドキドキしたのを覚えてます。
十数年後に、そのお店に入社することになるのですが、店員がめちゃくちゃ個性的で、変わってる人しかいなかった。
でも初めて入ったとき、店員さんがいた記憶が無い。
いたら絶対に覚えているはずだ。
たぶん、いなかったんじゃないかなぁと思ってる。
耽美、ゴシック、エロ・グロ
今はあまりなくなってしまって寂しいですが、
当時のヴィレッジヴァンガードには、必ず黒い棚がありました。
コーナーの核はトーキングヘッズ、夜想、アトリエサードの画集たち。
楠本まき、鳩山郁子、松井冬子、丸尾末広、山本タカト、バルテュス、バタイユ、澁澤龍彦、エトセトラ
金子国義さんと出会ったのはヴィレッジヴァンガードでした。
店内の雰囲気も相まって、見ちゃっていいのかしらという背徳感、高揚感。
はまらずにはいられないでしょ。
高校生のとき、気持ち的には毎日ぐらい通っていました。
絵のはなし。
話は変わりますが、私は小さいころから絵を描くのが好きで、
将来は画家を夢見ておりました。のちに美術大学に入学し、油画を専攻することになります。
そこでつきつけられるのは受験の絵ではなく、いかに自分の絵を描くかということ。
現役で入ってしまったので、多浪の同級生達がそれはもう圧倒的に絵がうまく
もう何を描いていいかわからなくなります。絵、描きたいのか?と。
(このへんのとこの美大生の心の葛藤、狭い世界でのたうちまわっている感じは【ブルーピリオド】という漫画を読めばまるわかりなので、興味のあるかたは読んでみてください。)
私は思うのです、私が好きな絵ってどんなんだったっけ。と。
ゴッホは普通に好きです。セザンヌはお勉強しました。でも西洋絵画みたいな絵を描きたいわけじゃないよなと。
ちょうど当時は奈良美智、村上隆、会田誠などが登場し、世界的にも評価され
美大生の間では一種のムーブメントみたいなものが起こっておりました。
平面的でイラストのような作風の作品をつくる人がたくさんいました。そして私もその一人になります。
もともと漫画が好きだったのもあり、もうこれしかねえ!!と思ったのです。
そこで私がめちゃめちゃ影響を受けたのが、藤田嗣二さんと、金子国義さんだったのです。
みつめるキャッツアイ
金子国義さんは、澁澤龍彦翻訳のO嬢の物語、富士見ロマン文庫、ユリイカなど
多くの書籍、雑誌の装丁画、挿絵を手掛けています。
作品の最大の特徴といえば、妖しい瞳ではないでしょうか。
ベルベットのように重厚に描き出される世界。
キャンバスの中の人物たちは、くっきりとした深淵に似た瞳で、こちら側の私を見つめます。
そして甘く、時々毒を織り交ぜながら、向こう岸へと誘うのです。
猫の気まぐれさと、鳥の孤高さ、そこに人である気高さを兼ね備えた者たちに心惹かれずにはいられません。
ヴィレッジヴァンガードの猥雑な店内でみつけた、一度みたら忘れられない絵。
自分が絵をかくようになって、その独自性にあらためて感服しました。
構図と色使いが、むっちゃくちゃかっこいいんですよね。
あとご本人の生き様やビジュアル、価値観、その全てが
むっちゃくちゃかっこいいなあ、って思います。
自由という美しさを求めて。
自由で大胆な絵の構図と、ご本人の生き様。
美しさを求めて描き続け生き抜いたその姿は、これからも作品と共に、
絵を志す人間に刺さり続けるんだろうなぁ。
また、描いてみようかな。
コメント
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